社員の健康は、会社にとって大切な資源

「健康経営」という言葉を聞いたことがありますか。財務的に健全な経営をするという意味ではありません。社員の方の健康を考えた経営を行なうという考え方になります。

これからの日本は人口減少に伴い、超高齢化社会を迎えます。生産年齢人口は低下していき、企業は少ない人員で生産性を維持していかなくてはなりません。特に中小企業の場合、若い人が集まりにくいという事情があり、社員全体が高齢化していく傾向があるためこの問題は切実です。そこで今いる社員の健康を大切な資源ととらえ、そこへ企業が積極的に投資をしていき利益確保を目指す、それが「健康経営」です。

古井 祐司さん
東京大学政策ビジョン研究センター特任助教ヘルスケア・コミッティー株式会社代表取締役会長 古井 祐司さん

すでに欧米では取り組まれていましたが、日本でも経済産業省が2007年ごろから検討を始め、注目されるようになりました。この取り組みを行なうためには社員の健康状態を把握し、課題解決に向けて対策を取るという「分析・対策」の2つの柱が必要となります。

現状把握においては特定健診データの利用を勧めています。中小企業の場合は単体でデータ取得・分析が難しいかもしれませんが、データヘルス計画に基づき協会けんぽが協力してくれるでしょう。課題を発見し適切な対策を行えば、その効果は一年以内に表れてきます。

健康を顧みず働き続ければ、結果的に企業にとっては損失となります。試算では、医療費1に対し社員の欠勤によるコストが1、プレゼンティズムと呼ばれる心身不調の生産性ロスが3とされています。事業者の皆さんは社員の健康を大切な資源とみなし、この部分への投資を行なってほしいと考えています。

健康経営とは

良い健康状態を維持し、経営効率をアップする。

同じ人間が働くとしても、その人の体調によって仕事における生産性は増減します。特に高齢の社員が中心となる中小企業にとって、社員の健康は利益を左右する会社の資源そのものです。その資源へ投資を行ない経営効率をアップしていくというのが健康経営の基本的な考え方なのです。

中でも注意したいのは、プレゼンティズムの問題です。経済的な理由や責任感などから体調不良であっても社員が無理して出社し、仕事をすることが日常的に行われています。この状態をプレゼンティズムと言い、そのロスは医療費10万円台に対し50万円超あるとも言われています。プレゼンティズムはその状態を発見しづらいこともあり、健康経営にとって注意すべき問題の一つです。病欠による欠勤コストも3万円とされています。こうしたコストを健康経営によって低減できれば、自ずと経営効率は高まっていきます。

健康経営の図

健康経営を始める

会社ごとの状態を見極め、効果的な対策を

健康にいいと言われることを闇雲に始めるよりも、会社ごとの特徴を見極め適切な対策を行なうことが大切です。例えば20代の若い人が中心の職場であれば、菓子類やエナジードリンクの過剰摂取により血糖値が平均より高いことがありえます。他にもデスクワーク中心で肥満体質の社員が多いケースもあれば、常にストレスが掛かるような緊急性の高い職種もあります。

血糖値の高い症状が見られる場合、社内に備えられた自動販売機の内容をお茶など無糖のものへ切り替えただけで数値が改善した例があります。肥満傾向の会社では体重計での計量を決まった時間に行なうことで体質改善が図られたり、高ストレスの職場においては血圧測定を義務付けることで健康管理が促進した事例もあります。業務のルーチンの一つとして対策を行なうと継続性があり効果も表れやすくなりますし、従業員のヘルスリテラシー向上も期待できます。まずは協会けんぽや健保組合へ相談し、取り組みへの第一歩を踏み出しましょう。

※「健康経営」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。