2月15日(日)7:30~8:00
シリーズ・ふるさとの手仕事④
『豪雪に挑む 野鍛冶』
◆◆◆ふるさとの遺伝子を探る30分◆◆◆
1月半ばにまとまった雪が降ってから、まるで3月のような天気・・・
この時期にしては穏やかな日が続いていますが、
これも温暖化の影響でしょうか。
◎全国に誇る「白峰型」
雪が降ると活躍してくれるのがスノーダンプ。
今では「ママさんダンプ」などプラスチック製のものが主流ですが、
全国有数の豪雪地帯で知られる白山市白峰では、
ほとんどの家庭で鉄製のものを使っています。
(ちなみに「ママさんダンプ」は新潟のメーカーの登録商標です)
屋根雪を下ろすときや軒先の雪をどかすものなど、
用途によって大きさも数種類あって、
北陸の湿った重たい雪や気温が下がってカチカチになった雪にも
耐えられる丈夫な代物です。
普段は建設業を営んでいる江渕文弘さんは、
先人たちが試行錯誤して創り上げた鉄製のスノーダンプを
絶やしてはいけないと、4年前から造り始めました。
冬の間、注文を受けたものだけ手がけるのですが、
作れば作るほど、先人たちの知恵に驚かされたそうです。
「白峰型」スノーダンプは、滑りやすいように底が平らで
屋根雪下ろしの際、左右に振ることから角も丸みをつけて、
作業しやすいような工夫がなされています。
また一度にたくさんの雪を運べるように、市販のものより長く、
先のほうは少し角度をつけて浮かせてあります。
江渕さんはテレビで外の地域のニュースなどを見たとき、
『この「白峰型」のがあればもっと楽なのに・・・』と思えるほど、
先人が創り上げた逸品にほれ込んでいるのです。
現在、「白峰型」スノーダンプを手がけるのは江渕さんを含め2人。
誰も作らなくなったらきっと困る、先人が作った最高のものを
後世に残していきたい・・・というのが、江渕さんの思いなのです。
◎地域の「絆」
もともと雪深い白山ろくでは、オールのような形をした「こしき」が
屋根雪下ろしに欠かせない道具でした。
しかし、「38豪雪」のような大雪に見舞われると、
大量の雪をちまちまとすかしていくのは相当な重労働になります。
そこで当時の村の人たちは、トタン板に雪を乗せて運ぶなど、
工夫を始めました。最初は引っ張っていましたが、
取っ手をつけて押すものに代わり、試行錯誤の末、
今のようなスノーダンプの形になっていったのです。
このスノーダンプ。事の起こりは昭和20年代、
北海道の国鉄の職員が木製のもので線路の雪をどかしたのが
始まりと言われていて、鉄製は石川県が発祥!
中宮(旧吉野谷村)の宮村さん親子が手がけたのが最初だそうです。
白峰は昭和40年代に出来たそうですが、こちらも独自に生まれたもので、
「白峰型」として、近隣の福井県や岐阜県からも
注文が相次ぐほど、その使いやすさ、丈夫さは定評があったそうです。
また白峰では寺の屋根雪下ろしを門徒たちが総出で行うほど、
今も人と人とのつながりが深い土地柄でもあります。
集落の古老は『絆があるから』と、雪国に耐えて生きてきた
忍耐強さと思いやりの精神が息づいていると話します。
雪国に欠かせない鉄製スノーダンプは、
地域のつながりの大切さも教えてくれる逸品なのです。
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【リポーター】平見夕紀