5月31日(日)7:30~8:00
ふるさと探訪シリーズ・わが街こころの風景③
『塗師の家と誇り ~輪島市~』
◆◆◆ふるさとの遺伝子を探る30分◆◆◆
誰もが心に思い描く風景からふるさとの風土や歴史を探る、シリーズ3回目。
今回は輪島市です。輪島で思い浮かべるものといえば…
朝市、千枚田、曽々木海岸、御陣乗太鼓、総持寺などなどありますが、
やはりこれ抜きで語れないとなると、輪島塗ですよね。
◎塗師の家で誇りを感じる
輪島市は街のそこかしこで「漆」を感じさせる風景があふれています。
全国に誇る輪島塗は、堅牢さと優美さでその地位を確立しました。
漆器にかける思いを探ろうと、まずは1軒の塗師屋を訪ねました。
塗師屋とは、製造から販売までを手がける総合プロデューサーのことです。
大崎漆器店は建物の前が住居、後ろが作業場という典型的な塗師屋作りで、
「人前職後」というそうです。
ご主人の大崎さんに案内されて作業場に入ると、
漆の独特なにおいが漂ってきます。
ここでは、下地塗りから上塗りまで、4人の職人さんが働いています。
輪島塗の堅牢さを出す一番の特徴が「地の粉」。
輪島で産出される珪藻土を蒸し焼きにして粉末にしたもので、
この粒子がとても硬く、漆と混ぜ合わせると密着して、
特有の強固さを生み出すのです。
また輪島塗は100を越える作業工程を経て、約1年がかりで作られます。
ご主人の大崎さんいわく、「何一つかけても輪島塗じゃなくなる」と、
伝統ある漆器作りを頑なに守り続けているのです。
特産としては江戸時代に確立したとされる輪島塗は、
こうした職人さんたちの誇りがあってこそ、今日に受け継がれています。
しかし、全国に広めていくためには苦労もあったでしょう。
輪島漆器資料館を訪ねると、行商の際の道具が展示されています。
風呂敷で道具一式をかかえ、全国を行脚し、漆器を納める。
さらに納めた漆器に不具合がでると修復をするなど、
アフターケアも欠かさなかったのです。
市内にある「うるしの宿やしき」では、蒔絵や沈金を手がけ始めた頃の
たくさんの椀のサンプルが保管されています。
これは料亭などに卸していた職人さんがカタログ代わりに作ったもので、
その数、250個!季節に合ったものを飾っては、
お客さんにも楽しんでもらっているそうです。
◎「漆」のつながり
さて、旧門前町の総持寺祖院は、
かつて曹洞宗の大本山として隆盛を極めたお寺です。
合併してここも輪島市となったので、ここでも漆の風景はあるのか訪ねると、
さすが、古い輪島塗や仏具を見せていただけることに。
知客の木村さんは、総持寺の住職が持ち回りの輪番制で、
その人員が5万人いたということを聞かせてくれた上で、こんな推察を…
「この漆器いいなとか、この仏具いいなということで持ち帰ったのでは。
ここは北前船も通ってるので、全国に漆が動いたのでは…」
そして総持寺に近い黒島地区は、北前船の船主たちを多く輩出した
北前船の里として知られています。
板張りの壁に黒い瓦、窓には格子と、風情のある町並みが続きます。
まちづくり協議会の会長・川端さんは先祖から受け継いだ財産と、
その町並みの保存に力を注いでいます。
漆からつながるふるさとのこころの風景。
時代は変わっても、漆が魅せる落ち着きは日本人のこころそのもの。
輪島市はそんな心温まる風景がたくさん残っているのです。
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【リポーター】平見夕紀