6月1日(日)7:00~7:30
シリーズ・ふるさとをつなぐ③
『きらめく五彩 ~九谷焼とウルトラアート~』
◆◆◆ふるさとの遺伝子を探る30分◆◆◆
伝統工芸はいま、冬の時代を迎えています。
日本中どこでも安価で便利な商品が手に入り、
手づくりの伝統的な工芸品はゼイタクなものになってしまいました。
しかし、かつての輝きを取り戻そうと、新たな視点で取り組む人たちがいます。
◎能美九谷の伝統今昔
毎年大型連休に行われる「九谷茶碗まつり」。
もともとは斎田道開をまつる陶祖神社(能美市佐野町)と
九谷庄三をまつる九谷神社(能美市寺井町)の慰霊祭が発端で、
それぞれ開催していた「茶碗まつり」と「九谷まつり」が合わさって、
今日の「九谷茶碗まつり」に受け継がれています。
斎田道開は佐野赤絵と呼ばれる作風で知られ、本人の作といわれるものは
ほとんど残されていませんが、職人に的確に指示を出して、
佐野の地に赤絵ありという礎を築いていきます。
現代の赤絵作家の第一人者・福島武山さんは、
極細の筆で全盛期には1ミリの幅に4本の線を引いたという、繊細な技の持ち主。
筆から絵の具をスムーズに落とす技術を習得するには5年はかかるが、
実はその後からが修行。デザインが一番難しいと話してくれました。
九谷庄三は海外への販路を築くなどプロデューサー的な役割もした人物で、
いわゆる再興九谷の父とも言えます。金襴手や割取といった技法で、
約100年前のパリ万博で絶賛され、その作品はジャパンクタニと称されています。
庄三会会長を務める武腰敏昭さんは県内5人目の日本芸術院会員。
青と紺の濃淡で直線的なサギなどを描き、現代風のデザインに秀でています。
その武腰さんが平成5年に完成させたのが、
九谷陶芸村のシンボルとなっているビッグモニュメント・「甦」世紀をこえて。
近くに古墳があることから、銅鐸の形をイメージしているだけではなく、
生命の尊さや自然への畏敬の念を感じてもらえるよう、
森羅万象が表現されています。
福島さんも武腰さんも、今の時代にあった九谷焼を常に意識していて、
これこそが次の時代へとつながる伝統になると情熱を注いでいます。
◎広がるウルトラアート
そのビッグモニュメントに去年の秋、九谷の図柄が映し出されました。
北陸新幹線開業に向けて能美市が提唱している観光アクションプランの
一環として行われたウルトラアートの投影会です。
ウルトラアートは地域資源を生かしたローカルアートや
環境にやさしいエコアートなどの条件を満たす新しい視点の考えで、
能美市への誘客と地域に元気をもたらそうという活動です。
去年の夏から地元の温泉や九谷陶芸村で光のアートを作り出し、
特に九谷の基本の色となる五彩をイメージした「九谷五彩skyパラソル」は
多くの人たちのココロを釘づけにしてきました。
ウルトラアートde元気プロジェクトの北野道規さんは、
九谷の五彩こそが地域の宝、スペシャル中のスペシャルと話し、
この五彩があるからこそ、能美市は輝けると知恵を絞っています。
春からはシェア(共有)するアートとして九谷の名品などの写真をHPで公開。
また斎田道開が描いた龍をモチーフにした商品開発を手掛け、
「Dragon九谷」というブランドを立ち上げました。
こうしたウルトラアートの取り組みで相乗効果も生まれています。
九谷陶芸村の女性スタッフで作る「やまぼうしレディース(YBL)」が
「九谷LOVE招き猫ゆっきー」を発表。瞬く間に人気となり、
これまでの九谷陶芸村では考えられなかった現象が起きています。
地域の宝を見つめ直し、先人に感謝して、新たな九谷を発信する・・・
ウルトラアートの活動はふるさとにたくさんの元気をもたらしています。
この記事の関連情報:ウルトラアート公式HP
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【リポーター】平見夕紀