12月30日(日)7:30~8:00
シリーズ・いしかわの手仕事③
『ふるさと かぶら寿司めぐり』
◆◆◆ふるさとの遺伝子を探る30分◆◆◆
ことしも残りわずかとなりました。
この時期、食卓に登場する郷土料理といえば、「かぶら寿司」ですね。
家庭で作られているという方もいらっしゃるのでは?
前回の「発酵食品」に続き、冬の御馳走にスポットを当てます。
◎老舗の味
北陸特有の初冬の雷・「ブリおこし」が鳴ると、冬の漁の合図。
脂の乗ったブリは美味しいですよね。
そのブリを使った料理といえば「ブリ大根」が有名ですが、
「かぶら寿司」もその一つです。
明治8年創業の四十萬谷本舗では、ブリが一番美味しくなる
1月下旬から2月にかけて仕入れたものを独特の貯蔵法で塩漬けし、
高級ハムのように熟成させて、次のシーズンに使います。
漬け込む際は臭みが残らないよう、
ブリを挟んだ切り口を下にして1枚1枚、丁寧に並べていきます。
またカブは金沢青カブと白いカブを掛け合わせたオリジナルの品種で、
シャキッとした歯応えとほどよい柔らかさが特徴。
濃厚なブリとの相性はバツグンです!
金沢を代表する文豪・泉鏡花や室生犀星も「かぶら寿司」をこよなく愛し、
特に犀星の家では、真ん中を四角く切って犀星が食べ、
家族は端っこを食べたというエピソードが残っています。
藩政時代から、正月のもてなしやお世話になった人への贈答用など、
ハレの日の食べ物として重宝されてきた「かぶら寿司」。
石川の風土が生んだ冬のご馳走ですね。
◎ところ変われば…
「かぶら寿司」は地域によって中に挟む魚が変わります。
金沢はブリ、加賀の一部ではサケ、
能登ではサバを使うところがあるようです。
能登はサバが近海でよく捕れるというのも理由のひとつでしょうか。
穴水町曽良の生産グループでは地元産の大きな白カブ、
能登近海のサバ、奥能登の塩と、能登の食材にこだわっています。
私も今回の取材で初めていただきましたが、
ブリとはまた違って、サバの力強い旨味はカブと合いますね。
一方、小松市の西尾生産グループは、平成3年、
手取川のサケを使った「さけかぶら」を開発しました。
とろんとしたサケが独特の食感で人気を集めますが、
メンバーが高齢だったため、平成18年に活動を休止します。
当時、代表を務めた丸田愛子さんは、この味を守りたいと、
今でもお世話になった人へ贈るために「さけかぶら」を作り続けています。
「生きがい」、「幸せな人生」・・・
本来は家庭の味だった「かぶら寿司」。
住宅環境が変わって、自宅で作る人も減ったようですが、
今の時期が旬の食材で作る、石川ならではの味は
後世に伝えていきたいものです。
いしかわ大百科
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【リポーター】平見夕紀