化学物質過敏症
~私たちは逃げるしかないのですか~
2 0 1 9 年 5 月 2 5 日 放 送
ごくわずかな化学物質にも敏感に反応してしまい、
頭痛、うつ、不眠や便秘など
様々な症状に悩まされる「化学物質過敏症」。
原因物質から逃げるしかないのですが、
家を引っ越したり、仕事を辞めたり、
時には
家族にも理解されず家庭崩壊することも―。
苦悩する人たちを7年間にわたり取材しました。
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農薬散布に苦しむ40代の女性。
発症してからは、
デパートでの買い物も
映画鑑賞も
友達とのランチも
できなくなってしまいました。
農薬散布から逃れるため
向かった先は、山奥です。
ときには、1か月のうち
「22日間」避難していたことも。
こんな生活をもう9年も続けています。
4枚重ねの分厚いマスクを着けたこちらの女性は2児の母。
一番つらいのは、
こども園へ子どもを迎えに行くことです。
各家庭で使われている洗剤などのにおいが
園から持ち帰る「布団」や「衣類」
そして、
「わが子の髪の毛」にも。
そんな彼女も若いころは、
髪を染めたり、タバコを吸ったり…
ごくありふれた暮らしを送っていました。
家族も理解できない―。
誰もが直面する悩みです。
発症すると、
身の周りの化学物質に過敏に反応するように。
家族や周囲からは「気のせいだ」と言われ、孤立を深めていきます。
化学物質に苦しむ人たちの“駆け込み寺”のような場所があります。
化学物質過敏症支援センター(横浜市)では、
化学物質を極力避けた食品や生活用品などの情報提供のほか、
電話相談も行っています。
患者の家族などがボランティアで行っている支援活動で、
電話での相談は年間2000件にのぼります。
治療法は今のところ(化学物質を避ける)養生ですね。
特効薬はありません―。
こう話すのは、
化学物質過敏症の患者を診察する宮田医師。
化学物質過敏症の対象者は予備軍も含めると
日本の人口の7.5%。
約13人に1人にあたります。
(平成27年度・環境省の報告書より)
しかし、
発症のしくみは解っていません。
化学物質過敏症は、子どもにも広がっています。
高知県の女の子(小3)は、
床ワックスや柔軟剤のにおいで頭痛などを訴え、
学校に行けなくなりました。
4人家族で、母親と妹も患者です。
父親は学校と交渉。
化学物質を極力抑える工事を施した教室を作ってもらいました。
それでも、
教室にはいつも1人。
彼女の夢は
「みんなと一緒に遊ぶこと」です。
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化学物質過敏症についてもっと知りたい方や悩んでいる方へ
化学物質過敏症支援センター(外部リンク)
https://cssc4188cs.org/
受賞歴
2017年度「地方の時代」映像祭 選奨
2017年度ギャラクシー賞【報道活動部門】 選奨
2019年度日本民間放送連盟賞【放送と公共性部門】 最優秀賞
NNNドキュメント'19 年間最優秀賞
2019年度日本医学ジャーナリスト協会賞 優秀賞