座して待つより
~コロナと加賀温泉郷~
2 0 2 1 年 5 月 2 9 日 放 送
コロナ禍の温泉地は、
かつてない苦境に立たされています。
わずか1年間で
石川県加賀市の片山津温泉では
3つの旅館から灯りが消えました。
ある旅館は、一晩で数百人のキャンセル。
町には、職を失った人。
自分の代で店をたたもうとする青果店も―。
温泉地に再び賑やかな灯りがともる日は
果たして、くるのでしょうか。
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感染が拡大し始めた2020年春。
石川県内の温泉地では
宿泊客が8~9割減少。
多くの旅館が臨時休館となりました。
加賀市山代温泉の旅館「瑠璃光」もその1つ。
休館中、これまで売りにしてきた“おもてなし”を改革することに。
若女将「接客は、感染防止のため客室の入口までに制限します」
ベテランの客室係は戸惑っていました。
2020年秋。
国のGoToトラベルキャンペーンが光をもたらしました。
片山津温泉「湖畔の宿 森本」には、多くの観光客の姿が。
しかし、その賑わいも束の間…
冬、再び感染が拡大。
客室の改装のため積み立てていた資金は
当面の運転資金に充てざるを得ませんでした。
旅館に野菜や果物を卸す、青果店。
得意先の旅館3軒が
この1年で営業をやめてしまいました。
祖父の代から続く青果店ですが、
自分の代で店をたたむことを考えていました。
「後を継がせられない商売をやっているのがつらいかな…」
旅館が閉館し、働く場所を失った男性(59)。
レストランなどサービス部門の
マネージャーとして勤務していましたが
コロナの影響で無期限の休館となり、
退職を求められました。
「ほんと突然でしたよね。もう頭真っ白ですよね」
職を探そうにも、
59歳という年齢がネックとなり
再就職先はなかなかみつかりません。
山中温泉の「お花見久兵衛」は、
コロナを機に
大浴場から離れ不便だった露天風呂をすべて貸切に変更。
リフォームも行いました。
経営は決して楽ではないのに、
なぜ今、挑戦するのでしょうか。
「今直面している課題は
コロナ前からの課題で、一気に変化を迫られている」
「そのまま座していると死を待つのみ」
2021年春。
石川の感染者は再び大きく上昇し
またしてもキャンセルの対応に追われました。
立ち並ぶ加賀温泉郷の旅館は
コロナに見舞われた激動の時代に
どのようなカラーを打ち出し、輝きをはなつのでしょうか。
湯の町の灯りを、消さないために。